ここ数年、白の絵具について研究しています。もともとはレオナール藤田の白に魅了されて、その秘密を探っていたのですが、そのうち白の”面白さ”の虜になってしまいました。白の絵具で一般的なものとしては次の4つが挙げられます。
・シルバーホワイト(鉛白)
・ジンクホワイト(亜鉛華)
・チタニウムホワイト(チタン白)
・セラミックホワイト(チタン酸ストロンチウム)
シルバーホワイトは最近、鉛害などが問題視されており欧州を中心に生産が抑制されているようです。またジンクホワイトは制作過程の初期段階ではあまり使用しないほうが、後々、剥離の不安を取り除いてくれると思います。明治の画家・原撫松は自分が使っていた”フレークホワイト”という名前の絵具(鉛白が中心の白の絵の具)にジンク(亜鉛華)が微量に含まれていることを後になって知り、自分の作品が剥離してしまうのではないかという不安に悩んだことがあるようです。結局、心配は杞憂に終わったようですが、ジンクホワイトはその性質上、下層部分には使わないようにするなど、タイミング等を考えて使用すればいいと思います。
さて、これらメジャーな白に何か独自に工夫を加えることで独特な、自分好みの肌合いを作っていくことが大切になってきます。藤田はシルバー、チタンの白絵具に、ムードン、カオリン、タルクなどを混入しあの独特の色を完成させたようです。岡山県備前市の三石は良質のカオリンの産地です。そうした地の利も得、自分に合った白を作り出すことの楽しみは、まだまだ当分の間続きそうです。
作品はカオリン、タルクを使用した「ひまわりのドライフラワー」F30号(2020年)
アトリエGの絵画空間/後藤晋
洋画家・後藤晋がとりとめもなく絵のことをお話しするブログです。
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