人物画考

古来より芸術作品のモチーフとして”人物”は圧倒的な量と質を誇ってきた。代表的な芸術作品として頭に思い浮かぶものの殆どが人物を題材としたものである。絵画でいうと17世紀にホッベマやロイスダールが風景画を描いてはいるが、本当の意味で風景画が絵画のジャンルとして扱われるようになったのは1840年頃にチューブ入絵具が発明され、屋外でのスケッチが容易になってからのことである。それが印象派の誕生にも繋がっていて、爾来、風景画も芸術作品の仲間入りを果たしたと言える。下の写真は、昨年描いた人物画の(部分)であるが、私はやはり”人物”を描くのが一番好きだ。自分の想いが伝え易いモチーフだと考えている。古典絵画の神話の女神のように特別なアトリビュートを持たせなくとも、微妙な表情やポーズで何某かの心象表現が出来るモチーフだと思っている。難しい題材なのではあるが、それ故に”やり甲斐”がある。かつてロートレックが ”私が風景画を描くのは人物画を描くための方便に過ぎない”と語っていたのを何かの書物で読んだことがある。彼が一人の芸術家として人物画に傾倒していたことを示す興味深い発言だと思っている。私も”魂の叫び”のような人物画をいつかは描いてみたいと願っている。

*アトリビュート=西洋美術において伝説上・歴史上の人物や神話の神などと関連づけられた持ち物のこと。聖母マリアに百合の花、ポセイドンに三叉槍など。


↓「手紙〜パリ14区メーヌ通り〜」F100号(部分)2020年

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アトリエGの絵画空間/後藤晋

洋画家・後藤晋がとりとめもなく絵のことをお話しするブログです。