五浦釣人

田中美術館(岡山県井原市)入り口付近に立つ平櫛田中の代表作の一つ「五浦釣人」。

モデルは平櫛田中が敬愛していた岡倉天心。東京美術学校(現・東京藝大)初代校長である。鹿鳴館時代という言葉に代表されるように明治の日本は欧化政策が主流で西洋文化を積極的に取り入れることに躍起になっていた。そんな時代に日本独自の文化、思想を大切にしようとしたのが岡倉である。美術教育でも鉛筆画が主流になりつつあった時代に毛筆画を奨励したのも岡倉であった。また彼の「茶の本」は英語にも翻訳され、日本独特の文化を西洋に紹介するのに重要な役割を演じた。そんな岡倉が茨城県の五浦に居を構え、多くの芸術家たちが彼の元に集まり芸術活動を行なった。(その拠点となった六角堂は東日本大震災で流された。)五浦の地で”制作と釣り”に明け暮れていた天心の姿を写した”一枚の写真”を元に田中が制作したのがこの「五浦釣人」像である。

田中美術館は現在改装中で令和5年春まで休館予定である。今日、絵の具を持ってこの像を描きに行った。しかし残念ながら、平櫛の作品の迫力に圧倒されてうまく描くことができずに早々に”退散”。

また日を改めて、気をとりなおして描きに行こうと考えている。

*岡山県井原市は平櫛田中の生誕の地である。


0コメント

  • 1000 / 1000

アトリエGの絵画空間/後藤晋

洋画家・後藤晋がとりとめもなく絵のことをお話しするブログです。